次世代映像プロダクションが徹底検証。「ZKシリーズ」は広告撮影に革命を起こしうるか。

『ZKシリーズ』の光学性能は、“単焦点レンズのクオリティ”を目標に開発されたという。
その進化を問うべく、日ごろから単焦点レンズを扱い、4K-6K撮影を行う映像プロダクション『エルロイ』が徹底調査を行った。
広告業界のクリエイターの中には、「ズームレンズは一般的に機能性は◎、ただ画質は・・・」という先入観を持つ者も少なくない。ZKシリーズは、そのイメージを覆すことができるだろうか。

単焦点レンズと「画質」を比較。シネズームレンズの光学性能を見極める。

ZKシリーズのクオリティとはどれ程のものなのか?カタログでは読み取れないレンズ性能を細部にわたって推し量る方法はないか。そう考えたエルロイのメンバーは、広告業界内で1、2を争うほど使用されている、高い光学性能が特徴のPLマウント単焦点シネレンズとの比較検証撮影を実施した。さらに実際の広告撮影の現場にもZKシリーズを導入し、多角的なチェックを試みた。検証に臨んだのは、業界歴10年以上のカメラマン高橋氏を筆頭に、演出・照明・エディター・撮影助手などで構成されたエルロイのShooting & Editingチーム。検証ポイントは、「解像度」「歪曲収差」。さらにレンズの個性が表れる「色味」についても、様々な撮影を通して明らかになった。

ZKシリーズは、ズームレンズとしての機能性だけでなく4K撮影に完全対応している点も大きな特徴と言われている。自社で“RED EPIC DRAGON”や“SONY FS7”といった4Kカメラを保有するエルロイでは、4K・6Kでの撮影が日常的だ。そうした日々の中、高解像度撮影はカメラ本体の性能だけでなく、それを余すことなく活かしきるレンズ性能が極めて重要だと肌で感じているという。

そこで、まず行ったのが「解像度」に関する単焦点レンズとの比較検証だ。なお、4K性能の指標については、FUJINONレンズの規格としてTVL(水平解像度)2000以上を一つの目安としており、その性能チェックに用いているチャートをお借りして比較撮影を敢行。T値は各レンズの開放値とT2.9で統一した状態の2パターンを設定。また、女性モデルの撮影も実施し、線・文字・肌・髪など、様々な面からシャープさを比較した。

まずT値を2.9に統一したパターン。 中央のチャートを見ると小型のPLマウント単焦点レンズとZKシリーズとどちらがどちらの映像なのか、区別がつかないレベルだ。さらに四隅のチャート=画角の周辺部に記された太線や文字のキレに関しては、ZKシリーズが上回っているとすら言えるかもしれない。

開放値での比較については、文字で表すよりもチャート写真を見ていただく方が早いだろう。この解像度の高さには、10年以上にわたってファインダーを見つめ続けてきたカメラマン高橋氏も驚きの声をあげた。

そもそも映像は、レンズを通る光の高~低の波長、つまり幅広い周波数を捉えることによって構成されている。例えば建築物の撮影ならば、細かな細工や柄などを伝えているのが高周波であり、無地の壁面などを伝えているのが低周波と、それぞれに役割を持っている。ZKシリーズの開発では、4K時代のニーズに応えるべく、この周波数の高低をバランスよく捉えるため、正確に数値化してゼロベースで再検証したという。さらに、これまでARRI社との共同開発などで取り組んできたシネレンズ開発の知見を惜しみなく導入したと聞いている。その成果が、一目で分かるほどの「ズーム全域での圧倒的なシャープさ」となって表れた形だ。

 

続いてチェックを行ったのは、ズームレンズにつきものと言える「歪曲収差」だ。検証の場として選んだのは、「那珂川町馬頭広重美術館」。建物全体を包みこみ、整然とした美しさを誇る八溝杉の格子状ルーバーは、今回の撮影に最適と言えるだろう。ここでもPLマウント単焦点レンズのシリーズを用意。14mm、16mm、20mm、24mm、32mm、50mm、85mm、135mm、180mmの9本を用い、ZK2.5×14(14-35mm)、4.7×19(19-90mm)、3.5×85(85-300mm)の3本と焦点距離・T値を合わせて比較撮影を行った。また、画像サンプルとしてシンプルな方眼でも同様の撮影を実施し、徹底検証に取り組んだ。

まず単焦点レンズだが、ほぼ歪曲は見られず、全レンズでばらつきもない。比較対象としたシリーズは、「単焦点レンズのスタンダード」とも評されているものだが、それも納得と言える。一方のZKシリーズは、焦点距離14-35mm をカバーする広角レンズZK2.5×14は、周辺部で外側に膨らむような樽型の歪曲が若干目につく。一方、もっとも使用頻度が高いと思われる19-90mmのZK4.7×19に変更すると、20mmではごくわずかに糸巻型のディストーションが見られたが、24mmでは単焦点レンズの画と見分けがつかないレベルに。これはいい意味でイメージを裏切る結果だ。

そもそも単焦点レンズに比べ、ズームレンズは構成するレンズ枚数が非常に多い。開発者に話を聞くと、ZKシリーズも約30枚のレンズで構成されているそうで、ディストーションの補正は困難を極めたという。ここでポイントとなったのが、歪曲収差の発生を防ぐ効果を持つ大口径非球面レンズだ。元々、放送用TVレンズを長年手がけてきたFUJINONは、世界で初めて30mm以上の大口径非球面レンズの搭載に成功するなど、膨大なノウハウを蓄積してきた。その技術力をシネレンズにも存分に活かし、さらに光の分散の異なる特性低分散ガラスと高屈折ガラスの構成比を微細に調整していったとのこと。そのきめ細かな仕事ぶりが、歪曲収差だけでなく4K解像度やコントラストの高さにつながっているのだ。

 

映画や広告の撮影現場で単焦点レンズが選ばれている理由は複数ある。中でも、色味・コントラスト・ボケ味といった「味のある画が撮れること」は大きな要因と言えるだろう。
ZKシリーズは、この点においてもカメラマンの要求に応えられるだろうか?
この検証は、美術館やモデル撮影、さらに実際の広告撮影現場での使用を通して行われた。

まず色味は、現場で見たままに対象の魅力を伝えているのが最大の特徴だ。これは女性モデルの肌や髪色などによく表れている。それに木目にかかる影など、明るさ・暗さを的確にとらえるコントラストのキレや、丸みのある柔らかなボケ味も、全てにおいて非常に「ナチュラル」という印象を受けた。まず色味は、現場で見たままに対象の魅力を伝えているのが最大の特徴だ。これは女性モデルの肌や髪色などによく表れている。それに木目にかかる影など、明るさ・暗さを的確にとらえるコントラストのキレや、丸みのある柔らかなボケ味も、全てにおいて非常に「ナチュラル」という印象を受けた。
前述したとおり、ZKシリーズでは約30枚ものレンズが用いられているが、開発者曰く「各レンズは、素材である硝材の見直しから行いました」とのこと。目指したのは、もちろん単焦点レンズのクオリティだ。あらゆる硝材の組み合わせを実験し、さらにフィルターの特殊コーティングなど、コントラスト調整やフレアの除去技術も地道にアップデートを重ねていく。そうして、こだわり抜いて完成した画質は、ZKシリーズ4本はもちろん、FUJINONシネズームレンズの最上位機種「HKシリーズ」、ARRI社と共同開発のシネレンズ「アルーラシリーズ」などとも統一されているとのこと。カラーグレーディングのしやすさも評価のポイントとなるだろう。

またZKシリーズでは、9枚絞り羽が導入されているが、この数字にも画質へのこだわりが見て取れる。これは開放~最小絞りの全シーンにおいて、キレイな円形で光を捉えられるようにと絞り形状を様々シミュレーションした結果誕生したもの。さらに9枚絞り羽は、光の眩しさを伝える光芒についても、余計なギラつきのない美しい光線が描けるという。もちろん、4K完全対応ということで、対応センサーサイズはスーパー35以上。ZKシリーズが、既存のズームレンズの枠を超えた、豊かな映像表現を形にできるのも納得がいく。

 

いい意味で驚いた、単焦点レンズ級の画質とフレキシブルさ。

今回ZKシリーズを扱ってみて、何より驚いたのは解像度の高さですね。画面中心の比較でも検証用に用意した単焦点シネレンズと全くそん色なかったですし、画角いっぱいまでクッキリと捉えていた。これなら例えば、山や自然の遠景撮影や、デザイン性の高い不動産や建築物の撮影では、ZKシリーズは威力を発揮すると思います。それにシーンを選ばず、キレがいいとピントの山を掴むのがすごく楽。撮影がスムーズに進むので、本当にありがたいですよ。

現場効率があがるという点では、画角を調整したいときにズームを少しいじるだけで済むのは大きなメリット。それと実際の広告撮影の現場で感じたのが、円形レールやクレーン、最近使用されることも多くなったMoVIなどの3軸ジンバルといった機材を用いた際の効率の良さが断違いだということ。円形レールは焦点距離を一度決めたら変更が難しいですし、「24mmと32mmの中間が一番おいしい」という場合にズームレンズが活きる。3軸ジンバルはバランスの調整がかなりシビアなので、単焦点レンズを何度も付け替えることなく、ZK1本で通せるのはすごく助かりました。駆動部のユニットがリモートコントロールに対応している上に、着脱が自由なのも状況に応じてフレキシブルに使えていいですよね。駆動部を取り外せば、レンズ自体が500g  [写真] ほど軽くなるから、3軸ジンバルでバランスを取る際もだいぶやりやすかった。これまではこうした撮影には、単焦点レンズとセットでズームレンズも持ち込む、というスタイルでした。けれど今なら、お世辞でもなんでもなくZK3本のみで行きたいですね。

シネズームレンズの進化には本当に驚かされましたが、今後改良が進むのであれば、ディストーション対策はさらに力を入れてほしいところ。今でも十分補正は効いていると思いますが、社内のエディターからも歪曲を修正するのはちょっと手間だと聞いています。現場だけでなく、後工程にとっても嬉しい存在になってもらえたら最高です。

シネズーム=単焦点レンズの集合体。 それが、ZKシリーズが生みだした最大の価値。

多角的な検証の結果、ZKシリーズは、ズームレンズのイメージを180度変えてしまった。ZK4.7×19(19-90mm)を例にあげると、解像度をはじめとしたいわゆる「画質」は、単焦点レンズに肉薄するレベルだ。しかも単焦点レンズに付き物のレンズ交換の手間も、ZKシリーズならば削減できてしまう。つまり、単焦点レンズ4、5本分の価値を、たった1本で担うハイパフォーマンスなレンズなのだ。

画作りへのこだわりと、現場効率のアップ。この2つを両立できることは、演出サイドにも大きなポイントになる。例えば、「ロケ地の使用時間が限られている」「モデルの集中力が落ちる前に撮影を終えたい」「現場でひらめいた斬新な画作りにトライする時間を作りたい」など、様々なニーズを満たすことができるだろう。

さらにもう一つ。実は今回、試験的に6KHD撮影も行ったのだが、ケラレがほとんど発生しなかったことを紹介しておきたい。エルロイでは“6K Shooting & Editingサービス”というものを展開しているそうだが、スーパー35以上のセンサーサイズに対応したレンズはまだ少なく、周辺光量は悩みの種とのこと。実際、比較対象に用いた単焦点レンズでは多少周辺にケラレが見えた。それが解消できるだけでも、導入の価値は十分ありという印象だ。ZKシリーズは、4K時代の撮影現場のあり方を根本から変えるだけのポテンシャルを持っていると言っても過言ではない。

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シネマトグラファーについて

株式会社エルロイ/ellroy Inc.

2012年設立。中目黒にオフィスを構える少数精鋭の組織ながら、話題のCMや映像作品を数多く手掛けているビジュアルクリエイティブ集団。会社立ち上げ時より4K撮影対応の機材を自社保有し、現在は6K撮影の専門サービスも展開するなど、常に次の時代を見据えた映像制作が最大の特徴。また、自社で企画・演出・撮影・照明・編集・CGと一気通貫で対応できる体制を整えており、広告に限らず、映画、ドラマ、テレビ番組など多様なジャンルで実績を積み重ねている。

カメラマン

髙橋 一己

麻布写真スタジオにて写真・撮影の基礎技術を身に着けたのち、CMカメラマンの「石川三明」氏に師事し、映像撮影技術の経験を積む。現在では、コスメ、自動車などのCM撮影やドラマオープニング映像、アーティストMVといった多彩なジャンルで作品を量産。また、あらゆるシネレンズ・スチルレンズに関して現場使用を試みるなど、撮影機材の知識は業界でも有数。一貫した画作りを目指してカラーグレーディングも自身で行っており、その向上心が尽きることはない。

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